シーズン野田のゴーマンブログ。
数年前、父親の仕事の手伝いで、あるお客さんの別荘まで絵画の搬入をしたことがありました。
その強羅にある別荘は、もともと旅館だったのを改装した立派な建物で、その日は持ち主のはからいで搬入したまま、そのまま泊まり、次の日に帰るという予定で、ちょっとした旅行気分だったのを覚えています。
管理人はすでに帰宅しており、お客様でもあり別荘の持ち主の金持ち一家は、次の日に来られると予定で、冷蔵庫の中の物は自由に食べて、フロも勝手に入っていいという、まさに父親と僕の貸し切り状態です。
とはいうものの、相手はお客様。
しかも何百万と言う絵を買ってくれるお得意様だというので、不手際がないようにやはり多少は気を使っていました。
しかし父親ときたら、お風呂に入れば散らかったまま、ビールも飲んだら飲みっぱなし、全て僕が片したのですが、よく考えれば僕が気を使い過ぎたのかもしれません。
どうせ管理人が片すんですから。
けれども自分はどうしても割り切ることが出来ずに、使う前と同じ状態に戻さずにはいられませんでした。
次の日、その一家が到着し、奥さんが朝ご飯にパンを買ってきて下さいました。
それは、近所でもテレビでも紹介されるような有名なパン屋で、中でも梅干しの入った変わり種アンパンが評判のお店だそうで、そういう前置きを聞きながら、僕と父親はそのアンパンを頂きました。
「どう?おいしいですか?」
奥さんが尋ねると、父親はパンを見つめながら
「まずいです」
とまさかの展開を持ってきました。
冗談かと思い、数秒間様子を見ていると完全に本気なのがわかり、僕はあわてて
「いや、おいしいじゃん?おいしいですよ」
とかぶせると、
「そうか?なんか梅干しとあんこがあんまりあってないんだよな」
とさらにまずい方面の内容を重ねてくるので、最終的に父親の分も僕が食べ、父親の分までおいしがりチャラにしようとがんばりました。
奥さんは笑っていました。
確かに、そんなにおいしくないし、普通のアンパンが食べたくなるアンパンって感じだったのですが…。
最終的に、父親はその一家に気功を教えていました。
着地点はいつも気功です。
というか、奇行でしかありません。
けれどもそのお客さんとは今もずっと関係は続いているようで、そういう父と気があうのかもしれません。
僕も気を使ってばかりでなく、言いたいことははっきり言おうと思っています。
とりあえず、同居人の角田に「死んでくれ」と言ってみます。
気を使ってなかなか言えないんですよね。