さておかれる冗談

脚本家でイラストレーターのシーズン野田が綴る「活字ラジオ」。たまに映画を酷評し気を紛らわす悪趣味を披露してます。http://nigaoolong.com/index.html

フリ向くどころか、フリに答える  シーズン野田

先日の角田のブログに書いてあった「maxellのイヤホン」。

ノイズキャンセリング機能っていう、周りの環境音に対して、逆の音波を出すことによって打ち消してノイズを0にしちゃうっていう驚天動地の機能がある…

って話なんですが、この効果はかなり絶大な分、僕は腹が立っています。

なぜなら、このイヤホンをしている角田は、何度呼びかけても返事をしないからです。

イヤホンからは僕の声とは逆の音波が出ているのです。


ベートベンの耳が聞こえなくなった時、息子の問いかけに気がつかず、息子は無視されているのだと勘違いし、たいそう傷ついたそうな。

まさに我が家でもその現象がおこっているそうな!!




先日も仕事のことで聞きたいことがあったので、ずっと「おいヒロ」と呼びかけていたのですが全く反応がなく、イヤホンをつけて首をふりながらノリノリで漫画を描いていました。


仕方なく、さらに大きな声で「おい、ヒロ?」


と呼びかけたのですが、さらに、キツツキかってくらいに首を縦に振ってノリノリに。

僕はさらにおおきく


「おい、角田、ライフスタイル角田」

と呼びかけました。


角田はまったく気がつかず、さらに激しく首をふりはじめました。



正直、僕はだんだん腹がたってきたので、思わず。

「おい、カス人間」

と呼びかけました。

それでも角田は、僕の呼びかけに気がつかず、メトロノームかってくらい首を動かし、ノリノリで漫画にペンを入れています。

角田の頭は、ノリノリすぎて残像になっているほどで、最終的にはバターになってしまうのではないか?と不安になりました。



そこで僕は、最終的に何を言ったら振り向くのかを検証することにしました。


「おい、ホクロ」


まったく気がつかず、点であるホクロが残像によって線になっていました。




「おいチキン」

やはり返事はなく、彼がマイケルJホックスではないことだけがわかりました。




そこで僕は、角田が中学生の時、後ろの席の奴に突然言われ傷ついた言葉を思い出し、



「おい、ネクラ!」


と呼んでみました。

角田は一瞬ビクッとして、後ろを振り向いたものの、何事もなかったようにまた漫画を描き始めました。

もう少しです。



今度は、彼が高校生の時に修学旅行で言われ、傷ついたと言われる言葉を、吐いてみました。



「おい、大ネクラ!」



これは、集合写真で写真家に「もっと一番端の君、笑って、君だよ君!大ネクラな君だよ、ホクロ顔の、大ネクラそうな君だよ」みたいな流れで言われた言葉らしいです。

すると角田は、正面を向き、ニヤリと笑いピースをしたかと思うと、またノリノリで漫画を書き始めました。



もう少しなんだけどなぁと思い、今度は角田が彼女に言われたもっとも傷ついた言葉を言ってやりました。



「おい、ド下手!」



すると彼は突然爪を研ぎ、チンポに冷水をかけ始めました。

そして何事もなく、またノリノリで漫画を書き始めました。


もう少しだと思い、今度は、彼の習性を思い出し




「ニャー!!」




と威嚇してみました。

猫とよく喧嘩をし、傷だらけで帰って来る彼の姿を思い出したのです。

すると角田は、形相を変え、「ニャー!」といいながらキョロキョロし始め、いきなり表へ飛び出したかと思うと、ネズミをくわえて戻ってきました。

そして何事もなかったように、ネズミをくわえたまま漫画を描き始めました。



こっちは緊急で、聞きたいことがあるのに、まだ気がつかない角田に
僕はとうとうしびれを切らし




「おい、しびれ切らさせ!!」




と叫びました。


すると角田は、なに食わぬ顔で、イヤホンを取り、

「なに、呼んだ?」

と言いながらコチラを向きました。

まさかこんだけ色々呼んで、最終的に「しびれ切らさせ」で振り向く角田にびっくりして、僕は聞きたいことをすっかり忘れてしまいました。

「いや、お前ってさ、変わってるよな」

ねずみを頭に乗せ、ポカーンとしながら、コチラを見ている角田に内心腹が立ちながらも、そんな彼があっぱれでもあり、なぜか清々しい気分になりました。


イヤホンも周囲の環境音が少しは聞こえるくらいにしておかないと、自分も他人もけがするぜと、僕はこの場を借りて言いたいわけです。