スナック シーズン野田

学生時代、僕らは「一休」という激安居酒屋にお世話になりました。

知っている方も多いと思いますが、とにかく安い。

安かろうまずかろう、けど仲間と飲むのは楽しかろう！

ということでお店の会員カードなんか作って、芸術論を交わしたものです。

やがて、ステージがあがり「笑笑」となり、

「白木屋」「土間土間」「村さ来」「庄屋」「東方見聞録」「やぐら茶屋」「つぼ八」あるいは「加賀屋」あたりを彷徨います。

なんにせよ「チェーンマンセー」「チェーンラブ」と言った具合で、どこもかしこも似たりよったり。

冒険するだなんて思いもよらず、

埋蔵金に執着を見せる糸井重里とかを嘲笑している腑抜けな与太者学生時代でありました。

けれども、僕らもいい大人になりました。

チェーンに文字通り雁字搦めでは、深みのない中田の秀ちゃんもみたいに薄い人間になってしまうだろうと危機感が芽生えました。

だいたい、大人になったら、酒浸りになって、寝る前は酒がなくては寝られない、

ワンカップ大関とは俺のことだ！

といわんばかりに、顔を真っ赤にして、その日あったやなことを忘れるためのツールとして酒が機能する

「おっさんらしいおっさん」

を夢見ていたのですが、正直ロクに酒なんて飲みません。

酒なんてなくてもいいとすら思っています（特に猿酒）。

チョコバーとウエハースとチュッパチャップスさえあればいいと思っています。

けれども僕もアラサーです。

恐ろしいことに、アラサーです。

年を言うのが嫌な年齢です。

金があったら「やずや」や「ドモホルンリンクル」と長期契約してもおかしくありません。

三蔵法師に頭を締められている悟空を見て「俺の痛みに比べたら…」とうまく同情出来ません。

けっこういいとこまで行ったと思ったら、まだお釈迦様の手の平の上であるエピソードにはガッツリ共感できます。

名前を呼ばれたら、安易に返事をしないのが鉄則です。

ひょうたんに吸い込まれちゃうからね、社会と言う名の。

西遊記ネタはどうでもいいんだよ！！

と脳が指令を出しました。

で、で、でこれでは駄目だと思いまして、そこで、僕の憧れていた大人に少しでも近づくために、

スナック

に行ってみました。

大人と行ったらスナックですよね？

国分寺にある、紫の看板が気になる「藤」というお店です。

一人で行くのはまだちょっとおませさんな感じがするので、メンバーに会社の同僚を演じてもらい、

「仕事帰りに一杯」

という行き慣れている風体を取り繕います。

この時僕の頭によぎる一抹の不安。

それは

「裸の女がいたらどうしよう？」

ということです。

スナックには、裸の女がテーブルにまたがり、スナック菓子をボロボロ食べまくって、

ついでにカルビーのモニターバイトをやっている様な

アングラなイメージがあったので凄い不安だったのですが、

裸の女などいない。

奥手で童貞の巾着ボーイである僕は、少しほっとしました。

案ずるより生むが易し。

勇気を出して行って良かった。

ママとみさきちゃんが、やさしく出迎えてくれました。

ほっ

ほっとするために、おっさんはスナックに行くのですね。

とりあえず、一安心。

みさきちゃんに集合写真を撮ってもらいます。

カシャー！

けれども、はっと気がついたのです。

スナックで集合写真はどうなんだ？？

完全に、行き慣れていないのがバレバレでは？

いや、逆に行き過ぎて違う楽しみ方をしているように見えるかも……逡巡するも時すでに遅し…。

しかもダブルピースをしています。

お汁粉食いたいと思いながらダブルピースしています…。

ああ、お里がバレ始めている…。

けれども龍崎のカラオケが行き慣れている感じを演出します。

なかなかのおっさん具合です。

溶け込んでる溶け込んでる！

取り返し始めました！

角田は巻き返そうと、得意の古畑任三郎のモノマネで挽回です。

「今泉君…え〜今泉君…向島君…え〜今泉君…」
完全に不調です。

その不調具合、

溶け込んでる溶け込んでる！

けれども溶け込めない坂元は、あきらかな不機嫌顔。

僕はミサキちゃんとデュエットなんかして、しかもハモったりなんかして、ダブルピースを巻き返すも、

その横で坂元は、グリーのゲームをダウンロードしています。

メンバーと行くと、逆にメンバーに気を使うので今度は一人で行こうかな。

だけどそれはそれで、また勇気がいるなぁ……。

再勇気（さいゆうき）だな…

わおう！

以上報告終わります。