さておかれる冗談

脚本家でイラストレーターのシーズン野田が綴る「活字ラジオ」。たまに映画を酷評し気を紛らわす悪趣味を披露してます。http://nigaoolong.com/index.html

テニスコートの神谷さんとの話。    シーズン野田

テニスコートの神谷さん。

武蔵野美術大学を卒業し、ずっとコントをやり続けてる僕らの先輩にあたる方で、卒業後も毎年公演を重ねている。

僕も舞台には何度か足を運んだのだが、何と一度も話した事がない間柄である。

しかし!ついに長年の時を超えて、いきなりのさし飲みである。

いったいどんな人なのだろうか。



少し緊張しながら渋谷のツタヤで待っていると、どこか見覚えのある顔と遭遇。

なんと、高校時代に一緒にお笑いを目指していた荒谷だった!

荒谷だったと言われても、なんのこっちゃですよね…。

いやね、こいつの突っ込みがうまいんだよ。

と言われてもなんのこっちゃですよね。




、荒谷との久々の再会を惜しみつつ、神谷さんと合流。

お会いするまではクールで、あまりしゃべらない方だと思いきやどっこい、ただならぬ熱血漢であった。

最近では、みかんのむきかたの著者でも知られ、様々な分野で活躍する神谷さんだが、その根底にはずっとコントへのこだわりがにじみ出ていた。

女の話の一つもなく、そこで繰り広げられたのは全てお笑いの話。

本当にお笑いの話だけ。

芸人ではない、けれど、笑いをやっているその葛藤と、プライドと、揺らぎ。

同じスタンスだからか、通じるものがたくさんあったのが印象深い。

志村けんダウンタウン伊集院光三木聡吉田戦車和田ラジオ… 

といった、様々なルーツを引き合いに出しながら、今自分たちがコント師としてやることはなんなのか?

力強い言葉が飛び交い、気がつけば終電に。

これだけ笑いだけで延々と話し合う事も久々であり、脳内からドーパミンが出まくりだった。


神谷さんは言います。



「色んな先陣の恩恵を授かってきて、それを受け継ぎ、下に返すのは表現者として使命じゃなくない?」



あのときの自分が今の自分に憧れるのか?

そんな思いを突きつけられた気がした。



偶然出くわした荒谷はどうなんだろう。

そういえば以前彼から「仕事を辞めて、お笑いをやろうと思っている」って連絡があったな。

今彼はスーツを着てたし、いっぱしに社会人としてばりばりやっているのかな。

なんか、時はずいぶん流れてしまったよ。

おい、荒谷。

俺はなんとかまだしがみついてやってるぞ。

何でやってるのかたまにわからなくなるけど、やっていくしか今のところないみたい。

あの時の自分が、荒谷が、憧れる存在になるためにな。



だから神谷さんがね、

シーンを作ろう、だって。

だから、

はい作ります、って。