さておかれる冗談

脚本家でイラストレーターのシーズン野田が綴る「活字ラジオ」。たまに映画を酷評し気を紛らわす悪趣味を披露してます。http://nigaoolong.com/index.html

対談!! バレンタイン×シーズン野田


君はチョコをもらったことがないのか?…バレンタイン


野田  「今日はよろしくお願いします」
バレンタイン  「ああ、よろしく」
野田  「なんか、けっこう貫禄ありますよね」
バレンタイン  「そうかな。まぁ私をきっかけに多くのカップルが誕生したと自負はしているよ」
野田  「けど、多くの卑屈な男性陣を生み出してもいますよ。どうせチョコなんかもらえないって」
バレンタイン  「それはね、私のせいではないだろう?あくまでもモテない男に責任がある」
野田  「いや、そりゃそうですけど、別にチョコなんてもらえなくたっていいんですよ。ただ、何かしら今日バレンタインなんだって一瞬思った時になぜか変な期待というか、もらえる奴に対してのもらえない奴になる瞬間があったりするんですよね。それって、なんか気持ち的に損することもあるじゃないですか」
バレンタイン 「私にはない発想だ」
野田  「わからないかな。例えば、駅前で募金しているのを見ると、なんか募金しない自分が責められているような気分にさせられるじゃないですか?無駄に。その不意打ちが嫌なんですよね」
バレンタイン  「募金したらいいじゃないか」
野田  「う〜ん。それだと根本的な解決じゃないんですよね」
バレンタイン  「難しいな、君は」
野田  「いや、だからね、その、広告的なロジックに絡めとられるのがいやなのかもしれませんね」
バレンタイン  「クリスマスの方が顕著だろ?」
野田  「クリスさんは、もう突っ切ってる感じがあるし年末の高揚感もあるからまだ楽しめるんですけど、バレンタインさんはもう、チョコ買えよっていう、その品のなさっていうか」
バレンタイン  「品がないのか私は?」
野田  「いやいや、そういう意味じゃないくて。その、バレンタインさんが悪いわけじゃないけど、なんか、もう砂糖会社とカカオ会社のメディア戦略だろうってどうしても冷めちゃう」
バレンタイン  「けど、もらえる奴は嬉しいじゃないか?」
野田  「いや、そういうことじゃなくてね。そもそももらえる奴はもう何かしらずっともらって来てるわけだし、改めてバレンタインだからってもらうこと必要もなくないですか?」
バレンタイン  「なんだ、君はチョコをもらったことがないのか?ずいぶん卑屈だな」
野田 「いや、ありますよ(笑)」
バレンタイン 「なら、いいじゃないか。甘いものは嫌いか?」
野田  「いや、大好きです!」
バレンタイン  「ならいいじゃないか。私のおかげで、君は甘いものを食べられるし、女性からの好意を感じる事ができる。全て私の監督力の賜物だぞ?」
野田  「監督力ってのはわかりませんが、チョコがもらえるという単体の喜びはあります。けれどもね、そこにバレンタインであるという付加価値がつくとね、おかえしめんどくせーな、っていうのが勝つんです。ほとんど義理チョコだし」
バレンタイン  「お返しくらい楽しんでしたらいいじゃないか」
野田  「いや、日々生きるのに必死でそんな余裕ないです。ホワイトデーさんとも、今度対談しますが、あちらはあちらであまり重要視されてない可哀想な感じがありますから、ホワイトデーでお返しするのもなんか気が引けるんですよね。そもそもホワイトデーなんて気がついたら過ぎていますからね。だからお返しはしないけど、お返しの事をふと思わせるのは、やっぱりバレンタインデーさんの方でね。中途半端にまぁまぁの風物詩になっている感じはあるので、そういう意識をしてしまう自分がめんどくさいな〜と思うんですよ」
バレンタイン  「今日は、私がゲストなのに、ほとんど君が喋っているな」
野田  「だいたい監督をきっかけにカップルが誕生するって、まるで俺のおかげだみたいに監督は言いますけど、バレンタインだから告白するとか、距離が縮まるとか、きっかけにするような奴は気持ち悪いですよ」
バレンタイン  「気持ちが悪い?」
野田  「悪いですよ(笑)」
バレンタイン  「私にどうしろっていうんだ?」
野田  「正直、消えてなくなって欲しいですね。いらないです。この世に」
バレンタイン  「一年に一回くらい我慢はできないのか?」
野田  「四年に一回くらいになって、もうちょっと大きなイベントになるくらいになればまだいいでしょうけどね。それこそ、五輪の種目に加えるとかね。競技、性別の隔てはなしで、選手が誰にでもいいからチョコを挙げて、カップル成立した順位を競うっていう。まぁ選手村じゃすでにやりまくりらしいから出来レースになっちまうかな」
バレンタイン  「なんて下劣な男だ……。口ばかりのチョ小賢しい奴め」

ー以上