「地獄から届いた赤紙 」 の巻き
今週のお題「私がアツくなる瞬間」
みなさんは地獄をみたことがありますか?
地獄は音一つ立てず、華麗に、そして秘密裏に自分に近づき、勢いよくあらわれるのです。
まるで忍者のように。
■地獄から届いた赤紙
ある日の朝。
起きぬけに感じる股間への違和感。
とりあえず、いきり立った股間を治めるためにもトイレで排尿。しかし股間への違和感は維持状態。う〜ん、まぁ時間が経てば収まるかな?なんて思っていたのも束の間。
右腰に痛みが発症!!
ははは!まさか。まさか、アレじゃないよな??
そうさ、まさかアレが再発するわけないよ。だって、、、だってなんだ?なんで再発しないだなんて思えるんだ?いや、信じたくない、おれは信じたくない。
絶対にあのホロコーストを繰り返してはならないのだ。
そう絶対に……ぁぁぁぁああああああああああ!!
いて〜〜〜〜〜〜腰がぁぁぁ〜〜〜〜完全に2年前のあの時同じだぁ〜〜
尿管結石やんけぇぇぇぇ!!!!!!
思わず関西弁になるほどの痛みだ。
みなさん、ここで勘違いしないで欲しいのは、尿管結石になると基本的には腰が痛くなります。股間ではなく、腎臓。腎臓の結石が動く事で激痛がはしるといった寸法です。
ああああ、またあの激イタやろうとバディを組まなければならないのかよ!!
やだぁぁ!!!
彦摩呂ならこの痛みをどう表現するのだろうか?
地獄から届いた赤紙や〜〜〜!〜ばんざーい!ばんざーい!!
とでもいうのだろうか?
陣痛と同じくらい痛いと言われているが、陣痛には夢があるじゃないか。
だって子供が産まれるんだから。
そうだ!子供が生まれてくると思い込もう。
そうすれば少しは楽になるはずだ。チンコの先から子供が…
そんな子供いやだ〜〜〜!!!!一生いじめられるよ!!!
とにかく痛みを和らげるためにどうにかしないと。
そうえいば、湯船につかると多少マシになった記憶があるぞ。
ははは、経験者は語るだ。
俺はビギナーではない!尿管結石の関係者なのだ!
ということで湯をはり風呂に浸かる。
……ぁあぁぁあぁぁぁぁ死ぬ〜〜〜〜!!
「あれ……一向に……一向に……よくならない!!」
むしろ余計痛くなったりしてないか?
■「わかったから…もうわかったから」
どうしたらいいのだ。俺が何をした?ただ夢を持って生きているだけじゃないか?
お金がないのがそんなに罪なのか?子供がいないのがそんなに反社会的行為なのか?
風俗店の前をウロウロして結局行かない勇気のなさと甲斐性のなさがそんなにださいのか?
気がつくと俺は湯船の中で「わかったから」と発していた。
それはおそらく、拷問に耐えて来た多くの人が発した言葉であると思う。
もういいでしょう?終わりにしませんか?あなたが偉大なのはわかったので。
赦して。
けれども、その多く場合が聞き入れてもらえないのと同様に、痛みは去るどころかその勢いを加速させる。
そして、吐く。。
前回は吐かなかった。吐かなかったぞ!!
何で今回はこんなに吐くんだ??あ!ネットの情報には痛過ぎて吐くこともある書いてあったかも…。ということはつまり、俺は今、痛過ぎて吐いている??
「なぜ、ワカメが…ああ、今朝ワカメスープ飲んだのか…近過去の俺なつかしい。。。モロモロモロモロ…」
近年まれにみる吐きっぷりである。
もう吐くモノはない!ヤツの居場所もパスワードも教えた。これ以上何を吐けと?
ん?何か聞こえる?
「部屋の番号をもう一度教えて下さい」だって?
どういうことだ??
誰だ??俺に話かけるあんたは一体どこに・・・まさか?? 結石が俺に話しかけている???
なんて気安いヤツなんだ。俺は、結石が欠席ではなく再び出席したせいでこんなめにあっているというのに。
「上等だコノヤロウ!!」
気がつくと俺は携帯に怒鳴っていた。
あ!!違う!結石ではない!!!俺は救急車を呼んだのだった!!!救急隊員に助けを求めている途中だったのだ!!その途中で嘔吐してしまったのだ。
ああああ、素っ裸だし、服を着ないと。
痛くて服なんか来てる場合じゃないけど、びしょびしょの素っ裸の男が救急車を呼んだとなれば、びしょびしょ病であると誤診される可能性もある。
あるいは<ターミーネータ登場バージョンをやってみた>というyoutubeに投稿するやってみた系動画の撮影していると勘違いされ、救急隊員が呆れて帰ってしまう可能性もある。
服を着る事はマストだった。
やがて救急車がくる時の多くの場合と同じように、徐々に近づくサイレン音。
偉いよな救急車は。だって、無料なんだぜ?。。。。え、無料だよな!!?
■すごい汗だ
救急車に担ぎ込まれたとき、幸い野次馬はおらず恥ずかしめられる事はなかった。
ただ、あまりの痛さゆえ、誰がいようがそれどころではないだろうが。
見つからなかったウォーリーがいたとしてもおそらくスルーしている事だろう。
救急隊員「大丈夫ですか?」
どうして彼らは開口一発目にこのような愚問を投げかけてくるのだろうか?大丈夫な分けないのである。だから呼んでいるのである。もちろん、答えられずにいると
「大丈夫じゃなさそうだな」
だって。
彼らはそんな自問自答を今まで何回繰り返して来たのか。
しかし本当に、全ての質問にちゃんと答える事ができない程の痛みなのである。
「保険証はある?」
「……わかんない」
「前回はどこの病院にいったの?」
「……わかんない」
「誰か来てくれる人はいますか?」
「……いない……あ、、、友達」
「友達がいるの?」
「いる……ライフスタイル角田」
「え?」
「なんでもない」
「すごい汗だ、よっぽど痛いみたいだ」
「いや、これは風呂に入ったから……」
ピーポーピーポー…
愛想とへつらいだけがモットーである自分が、このように人に対して適当にあしらってしまうなんて、おそろしや…。
■悪魔との契約
その後病院へ運び込まれ、点滴三本、座薬二本ぶちこんだのだが、一向に痛みはおさまらない。悶絶したまま、とうとう頭の中で悪魔と契約するに至った。
この痛みを押さえてくれるのなら……
<一生独身でも構わない>
<一生寿司を食べられなくても構わない>
<全財産をくれてやる>
<二度と海外に行けなくても構わない>
<親の死に目に会えなくても構わない>
<禿げてもいい>
etc
この先、あらゆる不幸が訪れようとも、この痛みに勝るものはない。
そんな気がしたのだ。
そんな中ただ一つ、悪魔と契約できないものがあった。
<売れなくても構わない>
「上等だコノヤロウ!!」
俺は悪魔の顔面にに契約書を叩き付けてやった。
お題「私が一番アツくなった瞬間の話」でした。
死がちらついた。いつ死ぬか分からないと感じた。享年はそぐそばかもしれない、と。
そう思うと、いてもいたってもいられず、「享年シリーズ」を制作した。
これはその試作である。