さておかれる冗談

脚本家でイラストレーターのシーズン野田が綴る「活字ラジオ」。たまに映画を酷評し気を紛らわす悪趣味を披露してます。http://nigaoolong.com/index.html

ELT的に言うならば「カクゴ」をしなければならない。

壁面に絵を描く。という仕事をしています。

自分の人生においては初めての壁面制作です。

普段はパソコンで絵を描くわけですが、もちろん今回はアナログなので予期せぬ事態に見舞われることがあります。

例えば、絵の具が垂れたり、絵の具が垂れたり、腹が減ったり、絵の具垂れたりと、戦国武将も真っ青のアクシデントです。

頭の中で何度もコマンドゼーット!!

を繰り返す中で、最近はようやく「ゼーット」と叫ばなくなってきました。

頭の中じゃなかったんかい。

壁面ですからある程度の大きさがあり、全体を把握する力がいつもより必要です。

デカイ女をイカせるために、あの手この手を駆使するのと似ています。

すいません、似てません。

デカイ女もたかがしれてますね。

部分を描いて全体を見るという作業で、行ったり来たり、寄せては返す波になりながら壁面に向かい続けるわけですから、かなり疲れます。

細かいところでうまくいっても、全体を見るとなかなか絵が変わってくれません。

把握する像が大きいと、いくらひらめいてもそれを実行して取り返しのつかなかった場合を考えてしまう問題も重なり、考え込む時間が増えてこれまたすすまない。

だから「よし!」となんども小さな覚悟をしながら絵を描いてます。

とりかえしのつかないアナログ作業だから、覚悟が必要なのです。

優柔不断な自分には大変悩ましい作業なんだと思いますが、これもそんな自分を変える訓練です。

いや、作品作りでは迷いに迷うからこそ、普段の日常でまでいちいち判断したくないのかもしれません。

判断や決断は本当に疲れるのです。

やらされてやる方が実は楽です。動物というのはそういうもんです。馬が合戦で迷わず突っ込んでいくように、言われたことをほいほいやっている方が基本は楽。

「何食べます?」

「なんでもいいです。食べたいものでいいですよ」

なんて、相手に合わせて気を使ってるつもりになっている人もいると思うのですが、それって相手に判断を委ねているだけであって、とても苦痛を強いてるんです。

そんな苦痛を伴いながら、ずっと絵を描いているので、相当の負荷がかかります。

「なんでもいい?えっと、じゃぁ。。けど。。。うーん。じゃぁ、お墓に行って墓石を舐めるのはどうだろう?」

みたいな感じで次第に狂っていくこともままあります。

それが面白いものを生み出すこともありますが、とにかくなるべく日常では判断をしたくなくなります。

本当になんでもいい、どうでもいい。

今まで自分は「服に興味がない」と思っていました。

しかしそうではなく「服を買う時に生じる判断がもたらすストレスに耐性がない」ということに気がつきました。

服事態にはとても興味があるのです。ただ、買うことが辛い。ユニクロで安いTシャツ一つ買うのに苦労します。

だからろくに買い換えないので、結果、ボロきれみたいな服を着ています。

服に限らず、だから家探しなんてのも本当に嫌いだし、今まで適当に探してくれたとこに転がり込むような生活でした。

そうやって「判断すること」から逃れて生きてきたのです。

その結果が今のゴミ屑みたいな自分を産んでしまったわけですが、クリエイティビティには過剰な判断が必要であり、その他では流れるまま生きざるを得ませんでした。

しかし、そのことに気がついた今からは、日常の中でも判断や覚悟や決意をなるべく引き受けていこうと思っています。

母に「今日何食べたい?」と聞かれたらなるべく答えようと思います。

ガチャピンに「ムック、あちーから頭のプロペラ回せよ!」言われても嫌だったら断ろうと思います。

一つ一つを曖昧にせずに、タイ米にして、何粒か数えられるようにして、お餅にしないで生きていこうと思います。

曖昧とタイ米でうまいことをいおうと画策しましたが見事失敗です。

失敗か成功かもきちんと判断することからです。

毎日がつらくなりそうです。

判断なんてしたくないよ、と言ってるそばから思う自分がいます。

しかし、犬の散歩ですら犬が行きたい方向に身を任せる人生とはもうおさらばしなければこの人生は変わりません。

「あれ・・・ここどこだ?」みたいなノルウェイの森のラストの連続のような毎日とはさよならです。

ラストオーダーも自分で決めます。

日常にもしっかりと絵を描いて生きていこうと思います。

とりあえすお母さん。あしたはそうめんが食べたいです。

 

 

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街角のクリエイティブにて、映画記事を連載しております。

「こちとら自腹じゃ」のオマージュコラムであり、井筒監督の影響で好き勝手言っております。嘘です。今回は「山田孝之3D」です。