さておかれる冗談

脚本家でイラストレーターのシーズン野田が綴る「活字ラジオ」。たまに映画を酷評し気を紛らわす悪趣味を披露してます。http://nigaoolong.com/index.html

ジャンクアートのススメ

例えば、漫画を描いたりコラムを書いたり映画を撮ったり舞台を作ったり、そういった表現活動をするクリエーターは、貧乏性でなければならないと思う。貧乏ではない。貧乏性だ。

いつだって「今の使えるかも」と、一見ゴミのように通り過ぎてしまう出来事を頭の片隅に置いておく。メモを取ることもあるかもしれない。

お金を持ってしまうとこの辺の感覚が鈍くなると言われたことがあるが、なるほど、金銭感覚もまた先ほど述べたような貧乏性に関わってくることなのかもしれない。

貧乏性は、貧乏ではなく、むしろ物事をプラスに転じる思考法なのでオススメだ。

貧乏性になるにはまず物事を疑うこと。

仕事中、眠そうな部下や後輩に「夜更かしでもしてたのか?寝るのも仕事だぞ!」と注意する。

普通なら、注意して満足。そこで終わりだ。

しかし「寝るのも仕事だぞ!」・・・よくよく考えたらなんておきまりのセリフだろう。そもそも果たして本当にそうなのか?みんなが言ってるから言ってるだけじゃないのか?

と疑ってみる。

「あれ、寝るのって、仕事じゃないぞ!寝るのが仕事ならそのまま寝かせてやればいいじゃないか。ああ、なんて恥ずかしいことを言ってしまったのだろう」

と、後悔をする。苦くてまずい思いを味わう。まぁここまではよくある。

でもここで

「でも、この後悔、何かに使えないかな?うまく転がしたら小説になるかもしれないなぁ。この気持ちをまんまカンバスにぶつけてみようか。なにかいい絵が描けるかもしれない!!」

と、ここで貧乏性を発動させると一気に気持ちがワクワクする。ただじゃ転ばない。まずい、わからないで終わらせない。きっと「何かある」と、その先を見据える。そうやって酸いも甘いもワクワクに変換するのだ。クリエーターってのはなんて費用対効果がいいのだろうか。と同時に、なんてめんどくさいやつなのだろうか。

一見、大胆に華麗に生きる表現者に憧れるけど、きっと成功した多くのクリエイターが、貧乏性でちまちまと疑いながら日常のゴミ拾いをみみっちくしてきたのだと思う。

そういう意味で、全部ジャンク・アート。表題につながる。