酷評シネマ「クロコダイルダンディー」
「クロコダイルダンディー」という映画をご存知でしょうか。
観るまで、てっきり巨大なクロコダイルと戦う話だとばかり思っていました。ジャングルの奥地に生息する人食いワニ。現地の人間もうかつに手は出せないほど恐れられている。がしかし、けっして不意をついて攻撃してくることはない。卑怯な手は一切使わず、真っ向勝負で挑んでくるのである。そう、ダンディなのだ。そんなダンディなワニに最愛の人を殺され復讐に燃える主人公のセガール。果たして…的なアドベンチャーものだと勝手に思っていたのだが、全く違いました。
主人公がクロコダイルダンディであり、何と戦うのかと言えばワニではなくニューヨーク。岩城滉一系のイケメンターザンことニッキーがニューヨークに行く話でした。
そういえば子供の頃、テレビで、どっかの国の原住民が東京にやってきて、近代文明に初めて触れて驚く!みたいな企画がよく放映されていたのをおぼえてみます。
子供ながらに「ははは、バカだな。ゲンジュウミン。ゲンジュウミン、バカ!」と言いながら、確実に原住民より馬鹿だったのにもかかわらず、テレビを見ながら嘲笑していました。今思うと(全部仕込みだったりするんだと思いますが)現住民が文明に触れたときに出る驚きや戸惑いを見ながら、自分の国は何て豊かなのだろう、とあまり建設的とは言えない、自己啓発にも似た作用が働いていたんだと思います。
クロコダイルダンディは80年代初頭の「パンチの音が全部一緒」系作品なので、年代的にそういう可愛さを狙った部分もあるのかもしれません。巨大なワニよりニューヨークの方が怖いぜ。ワニ退治よりも恋愛しようぜ?見たいな価値観が漫然と良いことのようなそんなムードはきっとあったのだろうと思います。もちろん逆説で描かれているお話だと思います。しかし、最後は恋愛で終わりますからね。
その辺の時代背景とかは、別に根拠はありません。適当です。
なんにせよ、都会の人間が田舎者をかわいらしいと思うって感覚は僕はあまり好きじゃないんだと思います。
片言の日本語で話すアメリカ人をかわいらしいと感じるのにも近いと思いますが、いやいや、アメリカ人かわいくないですよ。騙されちゃいけません。そういった下手な事に愛着を持つ感じって、非常に怖い事だと思います。子供だって何考えてるか分かりません。僕が赤ん坊が怖いのは、突然喋りだしそうだからです。赤ん坊と二人になれないのです。大人になるにつれ、相手を信用しなくなってきたのかもしれません。
とにかく、駄目な相手を見て、優越感に浸っているだけなのに、かわいらしいとすり替える様はいかがなものかと思うわけです。その辺をうまくコメディとして昇華しているのが「ボラット」で、同じような構図にもかかわらず、完全に観る方(アメリカ人)を馬鹿にしてますからね。この徹底ぶりがいいんだけど、これをアメリカ人が作っているわけですから、なかなか懐が広い国だよなぁと、羨ましくも思います。
今の日本じゃ確実に淘汰される人間です。がしかし、何かしらの魅力があるのも事実。パワーがある。クロコダイルダンディーを見ながら、なにか僕の胸にずっとモヤモヤしたものがありました。なんなんだろう、このうっとうしさ。自信満々のぶり。肌黒さ…。オカマのチンコを触って、「こいつ男だ」とまるで孫悟空のような無邪気さで周囲を圧倒する品のなさ。。
そして、僕はこのモヤモヤの正体に気がついた時、思わず「あ!」と声を上げました。イスから転げ落ちました。
そうなのです。布施さんに似ているのです。
↑布施イメージ。
おっと、すいません、布施さんを知らない人は、なんのこっちゃわかりませんよね。つーか、どうでもいいですよね。
けど、布施イズムを継承し、おかまいなく続けます。
布施さんとは、バイト先で出会いました。
僕より10歳以上年上で、見た目はまるでヒットマン。中国語がペラペラです。
マタギのような服装で、ある種の(本当にある種の)接客業にもかかわらず、客にもああしろこうしろとと、命令口調で対応し、「あいつなんなんだよ」と、周りのスタッフが怒られるという、ギャラクシー街道まっしぐらいな男です。
基本、客にため口。
「みろよ、あいつ、馬鹿だな…」
と、まるで聞こえるように心底馬鹿にします。
布施さんに対するクレームは数しれず、それはもやはクレームよ言うより、戸惑いです。一体何が起っているのかと。。。まるで、モノリスです。
常に胸毛が飛び出し「俺の胸毛からはフェロモンが出てるんだ、だから女がよってくるんだ、すげーだろ」と、汚い歯並びで不敵に笑う姿が印象的で、必ず語尾に「すげーだろ」をつけるのが布施流です。
けっして悪い人ではありません。
根っこの部分ではとてもやさしい一面もあるのです。僕も何度かよくしていただきました、多分。ただ、存在感から強烈な悪臭が放っているとでもいいましょうか、一定以上吸いすぎると、どこか脳の器官に支障がでるとでもいいましょうか、慣れが必要です。見た目に反して博識で頭が回るので、言い負かす事もできません。
ベテラン刑事でも、躊躇するヤマです。
まさに、クロコダイルダンディーなのですが、布施さんの場合、全くかわいいと思わせないところが誠実です。
もう見事に、可愛いと思えません。
いや、可愛いと思って欲しそうではあるのですが、一度容認してしまえば最後「俺の事が好きだろ?すげーだろ」と、曲解し、喧伝し始めめるのです。
そんな布施さんなのですが、いま自分もこうして特集を組むように、ほうぼうで色んな人に噂をされ、話題に上ります。語り継がれるのです。
バイト先にはもういません。僕もバイトにいかなくなりましたが、けれども今だに布施さんの話は出てくるようです。
今や「ワニに足を食いちぎられたらしい」という、クロコダイルダンディーと全く一緒の伝説が広まっているのを知った時、やっぱり布施さんは凄いなと思いました。
そんな布施さんなのですが、出家しました。
稼いだ日銭でピンサロに行く男はいまや、お坊さんです。
お布施される方になったのです。
今頃、何やってんだろう。
なんだか、お布施でピンサロに行く布施さんは、エスカレーターで困惑するクロコダイルダンディーや、便器で顔を洗うボラットのように、若干かわいげがあるような気もしてきました。
そういうと調子に乗るからやめておこう。
映画の話から大分それましたが、途中からニッキーが布施さんにしか見えなかったので、ご了承下さい。
さて、本題。
先日ライブを行った、サラヴァ東京のイベントのゲストに呼ばれました。
#にがウーロン、ケジタン、石原行雄、佐々木あらら、枡野浩一でポエトリーリーディングをパウンディング! - NAVER まとめ
なんと、あの天才歌人の枡野浩一さん直々にオファーをいただいたのです。
豪華ゲストの中で、がたがた震えるパーキンソンなのですが、がんばります!
よろしければ来てみてはいかがでしょうか?コントやりますので。
あと、料理がめちゃめちゃおいしいです!